KO負け後に緊急搬送…繰り返されるリング禍

KO負け後に緊急搬送…繰り返されるリング禍

7月15日、FIGHTER Xで行われたアントニー・TFCジム(フランス) VS パーンペット・パドゥンチャイムエタイジム(タイ) 戦にて事故が発生しました。

FIGHTER Xは、最初の2Rはパンチのみのボクシングルール、3R目からムエタイルールという特殊なルールで始まった新イベントです。
最終ラウンドの5R、アントニーの回転肘が炸裂し、パーンペットはダウンと同時にリングに頭を打ちつけ失神。
すぐに病院に搬送されましたが、意識不明のまま現在、脳死状態とのことです…

※追記:残念ながら、7月23日に亡くなってしまいました。ご冥福をお祈りいたします。

☝︎非常に好試合だったパーンペットVSアントニー。このような結末になってしまうとは…

7月3日には日本で試合をしたばかりで、判定で勝利し帰国し、15日の試合に挑んだそうです。
まだ25歳。小さな子どももおり、家族のために連戦したのでしょう…

☝︎前日計量時のパーンペット・パドゥンチャイムエタイ

スタジアムでは募金が集められたりしています。
こういう時のムエタイ界の助け合い精神はスゴいですね。

奇跡が起こるように…との各メディアのコメント欄での激励も多く寄せられています。

☝︎7月3日に日本での試合に出場し、ムエサイアム・スーパーミドル級王座を獲得したばかりでした。

 

最近は、タイでも日本でも新興イベントや素人同士の殴り合いイベントが異常に増えています。
事故が起こらなければいいけど…と危惧していましたが…

4年前の11月10日には、試合でKO負けした13歳の少年ムエタイ選手が2日後に亡くなった事故がありました。その少し前にはタイでボクシングの試合に出場したイタリア人選手がKO負けし亡くなった事故も…

私自身、観戦していた目の前で行われた試合後に亡くなったケースを今まで2回みています。

まだ自身のジムを持っていなかった20年以上前には、タイ修行に来ていた仲間がスパーリングの練習中に倒れて病院に搬送され、私も連絡を受けて駆けつけましたが亡くなってしまった経験もあることから、ジムを運営するにあたっても、事故防止に関しては常に神経を尖らせてきました。

あまり報道されていませんが、試合だけでなく練習中の事故も多く発生しています。しっかりとしたプロの指導者の元、管理された中での練習が必要です。

特に練習生同士で勝手に激しいスパーリングを始めたりする部分に目を光らせていました。誰かを捕まえてボコボコにしてストレスを発散しているような会員などを出入り禁止にしたりもしています。事務仕事をしなければならない時や、外出時も監視カメラで常に監視できるようにしていました。

 

昨今、喧嘩自慢同士の対戦みたいなのをよくみかけますが、そのような最近の傾向には非常に嫌悪感を抱いています。何か大変な事故でも起こらない限り、規制がかかったりすることもないのでしょうが…

きっちりと鍛えてコンディションを整えた、経験豊富なプロ同士の試合でも事故は起こります。ろくに練習もしていない、体調管理や防御法も練習していない者同士が殴り合うのは…無免許の人間に飛行機を操縦させるようなものですね…

学校体育の柔道ですが、中・高等学校での部活動中に亡くなるケースが多いです。やはり頭を強打しての事故がほとんどです。
直接顔面を撃ち抜く格闘技に関しては、国レベルでの練習法、健康面の対策、競技の管理運営が必要だと考えます。

最近の”なんでもやったもん勝ち”みたいな傾向に、関係者が誰一人として警鐘を鳴らす人がいないということにも違和感を感じています。

 

Text by HIDEKI SUZUKI

INGRAM  MUAY THAI  GYM

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